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ミスター・ネクタイ |
菅 禮子 |
鏡を見ると、シミだらけの顔をしている。かつての瑞々しく若々しかった面影は見るべくもない。人間というのは老いるものだということをしみじみ感じながら、ふとテレビの画面を見やると各党の候補者が来る参院選にあたっての政見放送をやっていた。おとなしく生真面目そうな顔が入れ替り、立ち替り登場してくる。中にはかつて銀幕の花形として、一世を風靡したひともいるが、そこには美男俳優として、全国の乙女たちの胸をときめかせた面影はすでになく、それぞれがそれぞれの踏み越えて来た歴程を大なり小なりに、その顔に刻んでいる。そういう容貌の老いの相を観るのは辛いなァと思っている内に、その方々の締めているネクタイがふと眼に入った。 |
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「お!これは」と思うようなのには、めったにお目にかからないが、強いてあげてみると、テレビ番組「新婚さんいらっしゃい」の司会者“桂文枝”師匠、往年の野球名選手、“落合博満”氏は、上衣の服の色にマッチしていて佳かった! それも、それが一国の指針、方途、さらには命運を決するともなれば、仇やおろそかに、たかがネクタイと言ってはおられまい。もし毎度首にぶら下げるそれが、ご本人でなく、夫人が選んでいるともなれば、女性の責任は重い!センスを磨くべきは、我々女性ということになろう。
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