2月19日、秋田ビューホテルにおいて、秋田県建設業協会（村岡淑�嚔�長）、秋田県建設産業団体連合会（菅良弘会長）、秋田県建設青年協議会（大沼武彦会長）の共催、東日本建設業保証株式会社の後援による「2013新春講演会」が開催された。
　今回は、財団法人 国土技術研究センターの大石久和理事長を講師に招き、「大災害頻発国土と日本人−インフラ認識の欠落−」をテーマに講演が行われ、日本国土における災害の来歴、国家予算と公共事業に対する認識の誤り、社会資本整備がもたらす経済への影響、歴史が国民に与えてきたインフラ認識について各種のデータを示しながらわかりやすく紹介し、いかにインフラ＝社会資本の整備が重要であるかを訴えた。
　大石理事長は、昭和45年に建設省に入省、以後、道路行政を中心に社会資本整備に関わり、技監を最後に平成14年の退官後、平成16年から現職を務める傍ら、東京大学、早稲田大学、京都大学において客員教授として教鞭をとっている。さらに、社会資本整備に携わった経験、経済、社会に関わる各種のデータ、“国土”そのもの、また、その形成過程から歴史を見るといった独自の切り口を記した著作「国土学事始め」を平成18年に出版している。
　講演の冒頭、大石理事長は、「国土ははたらきかけないと恵を返さない」と述べ、その“はたらきかけ”として公共事業による社会資本の積み立てが建設業によって提供されていること、一方、“公共事業”との表現からフローとしての認識されていない現状を提示。また、公共事業が政治行為であることから、それを決めるのは主権者である国民であり、理解が無ければ進まないことを述べた。近年、国家予算の議論の中で“国の借金”“国民一人当たり○○円の借金”という表現でクローズアップされてきた国債による予算調達については、特例国債、建設国債の発行推移を示し、社会保障などに充てられる特例国債の増加が国債の増加要因であること、国債は政府に対する国民の債権であること、公共事業批判が本質を外している現状を例示した。
　更に、世界各国の政治の実務者（首相）社会資本に対する姿勢についても海外の「社会資本が二流＝国も二流である」といったものに対し、「公共事業の“ばらまき”が借金増の原因」としている日本の認識、日本のマスコミが社会資本整備の重要性を世界各国の政治家が述べていること報道していないなど、国民の認識を歪めている事例、日本が公共投資、金融緩和を抑制し、長きデフレ環境下に置かれているのに対し、海外の各国がその逆の政策を実施することによりGDPを伸ばしてきたことを示すデータを紹介した。
　講演の副題となっている“インフラ認識”に言及する場面では、それを醸成してきた世界の歴史にも触れ、歴史上の戦争、為政者による大規模虐殺の発生やその規模を示し、都市・居住地を囲む城壁・防壁を必要とし、社会資本が無ければ安全・安心な暮らしが立ち行かなかった海外と日本との差異や、一般家屋においても、外部に繋がるドアが海外では内開き、日本では外開きになっているなど、普段気付かない、現代に至るまでのインフラが与えてきた民族性への影響を例示した。

　2月7日から8日の二日間、秋田市において「ゆきみらい2013 in 秋田」が開催された。
　この催しは、国・地方公共団体・企業・NPO・市民団体等により、克雪・利雪技術の課題や研究、雪に強い街づくり、雪国の自然環境・歴史・文化の継承など、ハード、ソフト両面にわたる様々な取り組みに対する意見交換や情報交換、ならびに全国へ雪国の情報発信を行うことにより、雪国の未来を展望し、地域の活性化を図ることを目的として開催され、北海道、北陸、東北地方においてリレーで毎年開催されている。今年は昭和63年度から数えて25回目、東北地方では9回目の開催。
　イベントはシンポジウム、研究発表会、見本市、除雪機械展示・実演会で構成され、7日は秋田県児童会館で秋田高専名誉教授 伊藤驍氏を講師に「大雪のメカニズムと雪国秋田の地域活性化」と題した講演が行われたほか、「疲弊する地域経済と高齢化に伴う冬期の安全・安心の確保」をテーマにパネルディスカッション、8日には同じく秋田県児童会館で「冬期における災害時の対応」「防雪・除雪技術の活用」「雪を活用した冬期観光や雪国ノウハウの継承」をテーマとした研究発表会が催された。また、7日、8日の両日にわたり、八橋運動公園駐車場においては除雪機械展示・実演会、秋田市文化会館地下ホールにおいては「ゆきみらい見本市」が設けられ、国土交通省、秋田県、秋田市など行政機関をはじめ、企業、団体による商品、技術紹介が各ブースで行われた。
　ゆきみらい見本市では、協会からも出展を行い、建設業協会ビジョン、秋田県内における除排雪に携わる地域建設業の紹介、また、会員企業から（株）和賀組（和賀幸雄社長・湯沢市）が協会ブース内で出展し、屋根用の融雪ネット『雪ん子』の実演、紹介が行われた。

　協会では、平成25年2月12日（火）秋田ビューホテルにおいて、平成24年度秋田県建設産業人材確保・育成推進協議会（会長・川上洵 秋田大学名誉教授）を開催した。
　協議会には、業界や行政機関、教育機関の代表者などを含めた委員12名が出席。
　始めに、人材確保・育成推進協議会川上会長が、「政権が交代し、“復興と防災”が掲げられ、公共工事が大幅に拡大されると思われる。笹子トンネル天井崩落の事故もあり、事前防災・減災の考え方に基づき老朽化した社会資本の維持管理も緊急な課題となっている。しかし、問題なのが“人材不足、人手不足”。予算はついたが、きちんとした構造物が作れるのか深刻な問題が懸念される。このような背景を踏まえ、本日は協議会の中での現状と平成24年度の活動、平成25年度の事業計画を事務局より報告していただき、長期的な展望についてご意見を伺いたい」とあいさつ。
　引き続き協議事項に入り、25年4月新規学卒者採用予定と25年3月高校卒業予定者の建設業への就職状況の調査結果が報告された。また、24年度の活動状況が事務局より説明され、秋田労働局からは最近の雇用失業情勢などが示された。その中で、会員企業調査によると、新規採用内定者数は72名から96名、採用企業数も38社から56社と大幅に昨年を上回っている。また、就職内定者99名のうち、県内内定者数は67％となっており県内採用率が県外採用率を大きく上回り逆転したことが今年の特徴となっていることを報告した。この結果を受けて、教育機関側からは「県内就職を希望しても受け皿が少なく、県外へというのが今までの流れだったが、今年は4割ほど県内の受け皿が増えたからではないか」業者側からは「公共工事をただ減らせばいいという風潮が薄れ、今の日本に必要なものという認識から、建設業に必要な人材を育てようという先のビジョンを県内業者も持ち始めたからではないか」、また、「今の建設業では職人不足が深刻な問題になっている。監理技術者ばかりが人材確保ではない。これからは新規学卒者だけではなく職人を育てる応援を協会も行政もするべきだ」との意見があった。「技能士に対して国の評価が低い。職人の処遇の見直しと社会的評価を高め『この道で食べていける』というシステムを作り基礎的な部分にも目を向けていかなければ、仕事はあっても仕事が出来ないという深刻な問題になる」との指摘もあり、協議会としても今後、情報収集に努め研究していくこととした。