会長の言葉

風の王国 会 長 菅原 三朗

 本県では急速に進む少子高齢化、人口減少、地域コミュニティ維持の課題などを解決し、安全・安心に暮らせる豊かな社会を築くためには、課題の根源にある産業不振と雇用の受皿不足への対応が必要であり、新たなリーディング産業の創出が望まれている。
 今、新成長戦略においてグリーンイノベーションが掲げられ、新エネルギーがその中核であるがこの巨大な市場を、本県がどう捉え活用していくか「秋田県新エネルギー産業戦略」を策定中である。
 新エネルギー産業と言ってもその範囲は、新エネルギー機器、部品、部材等の製造から新エネルギー等の供給事業及びメンテナンスなど広範多岐に亘る。建設産業が関わりを持つのは主に風力、地熱、太陽光、中小水力等の発電・電力供給事業における建設やメンテナンスなどである。
 地球温暖化問題及びエネルギー安全保障への対応などからも、再生可能(新)エネルギー産業は経済成長の牽引役として注目されており、2012年度には国の導入目標を達成するため太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマス等の発電による全発電量の全量買取制度「FIT」の導入が計画されており、再生可能エネルギーの導入が加速されるものと期待されている。
 このような時代背景の中で本県の持っている再生可能エネルギー(風力)の高いポテンシャルを活用し「風の王国」プロジェクトと言う政策提案がある。この構想を進めているのは「NPO環境あきた県民フォーラム」理事長の山本久博氏である。
 概要は投資額5千億円規模で秋田県の沿岸と大潟村に最大出力約240万KW(大型原発2.4基相当)数にして1,000基の風力発電基地を造る。この事業を支える風車の生産工場を誘致し、県内雇用の創出と国内風力発電産業の振興に寄与するという。
 本県は国内で最高水準と言われる風況(実稼動20~26%を達成)であり、又低周波や騒音による健康被害を防止出来る砂防林が民家との緩衝地帯を形成している。世界的に風車産業の需要が拡大しており最も成長している産業であるが日本は立ち後れている。しかし秋田県に大型需要が見込められれば進出可能な企業(重工業)もあると言う。

 何よりも東京都が北東北のグリーン電力購入を計画中であり、本格導入予定の2020年迄に400万KW規模の目標でである。「風の王国」完成時には約240万KWの規模となる。最新の風車は大型化が主流で海岸線もしくは洋上が中心となる。2,400KW級の風車は高度120mの風を捉え大潟村も有望地域である。
 バードストライクなどの環境問題や、景観の問題もあるが将来の県民のために有望な産業を興し、大きな雇用を創出する大義があり理解が得られるものと思われる。
 今後は東北全体が再生可能エネルギーを作りそれを都市へ送ることが急務であり、国のレベルでこの問題が検討されるはずである。スマートグリッドなどの送電網等の強化が必要であり電力会社が大規模には受け入れ不可能と言われるが、日本の電力会社の技術力で不可能なことはないはずであり東北電力・東京電力・東京都で調整可能なことと考える。
「風の王国」は全国で最も早く着手したプロジェクトだが、世界の風力発電事業の成功例を見ると、地元住民参加型の事業がベストであり県民の理解が成功の鍵となる。以上が「風の王国」プロジェクトの構想の概要である。
 これとは別に大潟村ではすでに、秋田大学や県内の新エネルギー関連企業が技術と製品を持ちより、「地域直流グリッド」の実証事業も行われており、又東京都の支援による「風力発電シンポジウム」等も開催されるなど地域の理解も進みつつある。
 建設産業としても国の公共事業が年々減少する中で新たな公共とも言うべき「風の王国」プロジェクトのような事業が「PFI」や「PPP」などで事業化が進む場合は是非参加をしていくべきだと思っており、今後県の「新エネルギー産業戦略」の中で行政も積極的に推進をしていくべきであると思っています。
 又建設産業が実際に、供給事業建設の施工やメンテナンスに関わっていく場合でも、専門知識の習得や能力の開発が必要であり、そのための行政からの支援や関係機関からの情報提供などとともに専門家による研修会の開催など、積極的な取り組みをしていかなければならない時代であると思います。