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スペインの絵画 |
酢谷 潔 |
何の意味も持たずスペインの地に降りたった。赤茶けた土地は荒涼としていて不気味な感じさえした。 |
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外に出てゴヤの銅像の前で一休みしていると何ともさわやかだった。 翌日はトレド観光となった。トレドは比較的マドリードの近くにあって古都として有名である。昔スペインの首府だったこともあり政治、文化の面でも大いに貢献した経緯がある。 大昔はローマにより征服されたこともあったが西暦569年西ゴート族により支配され首都になった。しかし712年にイスラムにより征服された。1085年スペインはトレドを奪回して首都とした。この日からトレドはスペインの政治面でも文化面においても輝かしい活躍を見せた。当時トレドには翻訳集団というのがあり貴重なアリストテレスのものも翻訳して世に出した。そしてヨーロッパの思想界に多大な貢献をした。1561年フェリペ二世は首都をマドリードに移したのでトレドの衰退がはじまった。現在のトレドは人口五万人で城壁でかこまれた地区とその外側に新しく出来た市街に住んでいる。 トレドに来て必ず見学するところはカテドラルである。この建物は何回も破壊されては修復された。この建物の中には聖器室があってその正面にはエル・グレコの聖衣剥奪という絵が展示されている。我々は先ずキリストの着ている赤い衣服の赤の色のすごさに圧倒される。この赤い色によりこの絵の名を高めたといわれているがなる程と納得出来るものである。その後我々はある小さな教会に案内された。教会は少々鼻について来たので又教会かとあちこちで不満の声があがった。この教会はサント・トメ教会といってグレコの最 高傑作の一つ「オルガス伯爵の埋葬」が展示されている所だった。ガイドは声を張りあげて、世界三大名画の一つと叫んでいた。画面は下部が埋葬者が並び上部は天国を描いていた。そしてトレドに功績のあったオルガス氏の魂が天上に向かっていることをあらわしている。更に埋葬者の中に自分の姿を描き入れる熱の入れようである。我々が見ただけではそんなすばらしい絵とも思われないが、ただ評判を聞いてそうかなと思うだけである。三大名画の話は前にも聞いたことがある。 プラドでラス・メニーナスを見た時である。その時はそんなに感じなかったがグレコの絵を見てスペインの人々の鑑賞眼の高さを感じない訳にはいかなかった。更に我々は「グレコの家」なる所へ案内された。 少し大きめな普通の家である。グレコの生活を再現したもので作品が展示されている。トレドに来て驚いたことに一つの都市にこんなにも有名な画家がいたということをこれ程顕著にあらわした所もないし一人の画家が都市を背負っている感じさえする。 |