秋田県では、平成18年度から低入札価格調査制度の運用を見直し、失格判断基準を導入していますが、依然としてダンピング受注が横行し、企業経営の圧迫、利益率の低下、工事品質への影響、下請等へのしわ寄せなどさまざまな問題が深刻化していることから、当協会では、低入札価格制度の見直し、特に調査基準価格並びに失格基準価格の設定の改善を秋田県に提案する資料とするため、5月1日から7月31日の期間において、建設工事コスト調査を実施した。
調査対象工事は当協会会員が、平成19年度に秋田県から受注し、同年度内に完成した工事で、道路工事・ほ装工事・河川砂防工事・ほ場整備工事・その他土木工事を対象とした。
調査対象企業は、地域性、工事種別、契約金額等を考慮し会員企業の中から選定をし、調査方法は選定した企業に対し、電子メールにて調査票を発送し、回収も電子メールで行った。調査票には個別工事の最終契約金額、予定価格、最終実行金額等を記入させ、損益率等については回収した調査票の中から有効データについて集計し、地域別、工事種類別、入札方式等に分類し損益率を算出した。また調査票のデータから工事の採算性を判断する上で有意義と思われる指標を選定・分析し、その結果を報告としてまとめた。
本調査の主催は、(社)秋田県建設業協会・秋田県建設産業団体連合会であるが、アンケートの調査票(コスト調査票)の作成、アンケート調査の集計分析及び報告書の作成等については、外部機関の(株)建設経営サービスに委託をして実施したものである。
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結果として(1)今回調査対象工事100件のうち53件が損益率0%未満の赤字工事となっている。(2)損益率と落札率との関係をみると、落札率80%未満に焦点を当てると、低入札調査対象工事において赤字工事の割合が高くなっている。(3)低入札調査対象工事の落札競争が低入札調査基準付近で行われやすいとみることができる。(4)落札価格が調査基準価格を下廻り、低入札価格調査を実施したとみられる工事20件のうち黒字工事は3件のみである。(5)最低制限価格対象工事については低入札対象工事に比べ落札率が高い傾向にある。(6)最低制限価格対象工事の落札率が低入札調査対象工事に比べ高くなっているのは採算ラインが高い傾向にあることが影響していると考えられる。
以上の結果、本件の公共工事の損益分岐ラインは落札率90%以上と考えられることから、(1)最低制限価格・低入札調査制度の運用見直し(基準価格の引き上げ)(2)予定価格の事前公表の見直し(3)入札契約制度の抜本的見直し(総合評価方式とボンド制)(4)対等で透明性の高い施工管理システムの構築等について県当局に対し提案書を提出し適正な利益が確保されるよう、入札契約制度の早急な整備を強く要望した。 |