文化遺産
Vol.18
「カラフルな鉄道車両」
E653系特急いなほ

 秋田と新潟を結ぶ羽越線の特急いなほは、昨秋から順次新型車両に切り替わり、現在は一日三往復の列車がすべて新型で運行されている。(この他にいなほには新潟〜酒田間の列車もある)
 新型と言っても、まっさらの新製車両ではなく、実は“おさがり”。上野発着の常磐線の特急として走っていた電車が、太平洋岸の路線から日本海側の路線に転属になってきたのだ。転属に際していろいろと手を加えられたので見た目はピカピカで、まさに新車同然ではある。
 昨今はこのいなほのように、カラフル(というか、いささかにぎやか)な外観の鉄道車両が増えている。いなほの外観は人によって好き嫌いがあるかもしれないが、日本海の夕陽や波をイメージした曲線を多用したデザインで、実に派手派手しい。このようなことが出来るのも、車両の外装を、従来のように塗装ですべて仕上げるのではなく、あらかじめ印刷を施したフィルムを車体に貼っていく、いわゆるラッピングという手法が普及してきたことによる。
 工期の短縮、デザインの柔軟性、必要があれば簡単に新しいものに貼り変えられることなど、ラッピング外装のメリットは多いが、デザインの柔軟性に頼りすぎて、漫画のキャラクターを車体いっぱいに描いたものなど、いささか度が過ぎているのではないかと思わされるものもある。一時的なブームなのかもしれないが、あまりごちゃごちゃしてものにせず、すっきりと目にも鮮やかで、旅が楽しくなるようなデザインを、施してほしいものである。
 ラッピング車両といえば、このコラムの前回で写真を掲載した由利高原鉄道の宇宙戦艦ヤマトのラッピングを施した車両も3月で運行を終え、4月からは別の漫画の登場人物をあしらったラッピング車両に生まれ変わった。こちらもまるで新車のようにピカピカだし、明るく可愛らしいデザインでコミックファンのみならず女性にも喜ばれそうだ。乗客増にも貢献するのではないだろうか。
(文・写真/加藤隆悦)