文化遺産
Vol.11
「小入川のお立ち台」
JR五能線小入川鉄橋

 昨今は、鉄道ブームがやや過熱気味ではないだろうか。筆者のように子どもの頃からの“鉄道好き”にとっては、鉄道に興味を持つ人が増えるのは嬉しいことなのだが、その一方で、SLなどの人気列車が走る撮影スポットではアマチュアの鉄道カメラマンが集まりすぎて、空気がピリピリして罵声が飛び交ったり、人様の畑に無断で立ち入ってカメラを構えるなど非常識な行動をとる者も現われるようになった。鉄道趣味が社会的に認知されるように、くれぐれも節度は守っていただきたいものである。
 鉄道写真の人気撮影スポットを、鉄道ファンの間では“お立ち台”と呼んでいる。秋田県内の人気お立ち台の一つが、JR五能線のあきた白神駅と岩館駅の間にある小入川鉄橋だ。海辺の集落の頭上にかかる鉄橋を人気列車「リゾートしらかみ」が行き交い、その向こうに日本海の水平線が眺められる。実に“絵になる”鉄道風景が広がっているのだ。
 小入川鉄橋に並行するように国道101号が走り、その国道橋の上から鉄橋を渡る列車を撮るのが古くからの定番であった。
 この国道橋のたもとに、今年4月に乗用車10台ほどを停められる駐車スペースが出来た。秋田県が整備したもののようだ。周辺には道の駅などもあるから、ここに新規に駐車スペースを設ける必然性は特にない。これはもう、“撮り鉄”のために県がつくってくれた駐車スペースに他ならないのだ。
 これまでは小入川鉄橋の写真を撮る時は路肩駐車するしかなかったから、鉄道ファンとしては本当にありがたい。そこまで鉄道趣味が社会的に認知されてきたものと解釈するべきだろうか。(あるいは、県庁の中にかなりの“鉄道マニア”がいたとか…)
 いずれにしろ、小入川のお立ち台での撮影はとてもやりやすくなった。鉄道写真には興味がないという人でも、一度撮ってみると夢中になる人が多い。確かにそれは、“風景写真”の一部でもあろうから。小入川のお立ち台、ぜひ一度お出かけいただいものである。
(文・写真/加藤隆悦)