文化遺産
Vol.9
「羽越線特急も世代交代」
485系特急いなほ

 前回のコラムでは新型の秋田新幹線新造車両を在来線を使って秋田の車両基地に運び入れる話題を取り上げた。来年春には、秋田新幹線は白が基調の現在のE3系から赤が基調のE6系にすべて入れ替わる。
 そんな秋田新幹線の世代交代の時期に、在来線でも世代交代があるというニュースが飛び込んできた。
 羽越線秋田〜新潟間を結ぶ特急いなほが、今年の秋から順次新型車両に置き換えられるというのだ。もっとも、こちらは新型車両といっても今年の3月まで常磐線で走っていた車両の“お古”で、常磐線特急が新型車両に置き換えられたため、ところてん式に押し出された車両が羽越線に回されてくるということだ。
 “お古”とはいえ、今度やってくるE653系は1997年に製造を開始した車両で、現行の1968年製造開始の485系に比べると、格段に新しい。製造開始時期が約30年も違うのだ。
 格段に新しいだけでなく、この車両を特急いなほに充当するにあたり、塗装を変えたり車内にラウンジスペースを設けるなど、今以上に鉄道旅を楽しめる演出もなされるようだ。日本海沿いを走る羽越線は車窓の景色も爽快だ。生まれ変わるいなほで、名勝「笹川流れ」の車窓風景などを楽しんでみたいものだ。
 もう一つ、このニュースには鉄道ファン的には大きな意味がある。485系は現在のJRが「国鉄」だった時代に製造されたもので、従って「国鉄型」とも呼ばれる。E653系はその意味では「JR型」。つまり、今度の交代劇は、羽越線における国鉄型特急電車の終焉をも意味するのだ。このことに特別な感慨を持つコアな鉄道ファンも少なくないはず。
 この夏は、去りゆく老兵485系をカメラに収めようと、羽越線沿線に繰り出す鉄道ファンも少なくないことだろう。
(写真は羽越線上浜〜小砂川間を走る485系特急いなほ。現行いなほには写真のようなリニューアル車や原形をとどめている編成など様々なタイプがある)
(文・写真/加藤隆悦)