文化遺産
Vol.8
「スーパーこまち、羽越線を走る?!」
E6系秋田新幹線

 この原稿を書いているのは5月下旬だが、6月2日のJR羽越線沿線はちょっとしたお祭り騒ぎになるのではないかと、筆者は予想している。
 それはこの日、スーパーこまちが新津駅から秋田駅までの羽越線を走るからだ。「そんなバカな!」と思われる方もおられるだろうが、これは事実。
 ただし、もちろんカラクリはある。兵庫県の鉄道車両製造会社で製造されたE6系スーパーこまちの新車が、東海道線・上越線・羽越線を経由して秋田の新幹線基地である秋田車両センターに“納車”されるのだ。
 一般に、東北新幹線や秋田新幹線の落成車両は、台船に積まれて海路で仙台港まで運ばれ、トレーラーで道路を通って利府町の新幹線車両センターに納められるパターンが多いのだが、手間や輸送コストを考えてみても、線路の上を走らせて納車できるのならそのほうが都合がよさそうのなのは素人にも理解できる。
 E6系や現行のE3系は、新幹線車両と言っても在来線の特急車両並みにコンパクトなサイズなので、在来線を走らせて(機関車に牽かれてだが)車両基地に届けることはさほど難しくない。新幹線と在来線ではレール幅が違うので輸送中は在来線用の仮台車を履かせる。
 この輸送スケジュールは鉄道趣味誌などに掲載されるから、熱心な鉄道ファンは既に承知していて、当日は全国から“撮り鉄”が羽越線沿線に繰り出すことになるのだ。もしかしたらこの日は、並行する国道7号も少し混み合うかもしれない。路肩に車を停めて通過する列車を撮り終えたら、すぐにまた車を走らせて先回りしてもう一度シャッターチャンスを狙うという鉄道ファンも少なくないから。
 筆者は残念ながらこの日は仕事があって撮影には出向けないが、6月23日にも同じE6系の新車回送輸送(甲種鉄道車両輸送と言う)があるようなので、その時はぜひ狙ってみたいと思っている。在来線を走った新幹線車両として、将来、“お宝写真”になるのではないかと思うから。
(掲載写真は羽越線吹浦〜女鹿間を走る特急いなほ)
(文・写真/加藤隆悦)