文化遺産
Vol.6
「スーパーこまちデビュー」
秋田新幹線 E6系

 秋田新幹線の第二世代となるE6系「スーパーこまち」が、いよいよ3月16日から営業運転をスタートさせた。従来の新幹線列車にはない赤い塗色が鮮烈な印象を与える。
 これまでの「こまち」が最高速度275km/hであったのに対して、「スーパーこまち」は最高速度300km/h、そして一年後には世界最高速となる320km/h運転が始まる。
 ただし、若干“断り書き”が必要な世界最高速ではある。300km/h超のスピードを出すのはあくまでも盛岡から先の東北新幹線区間でのこと。盛岡と秋田のあいだはカーブの多い在来線転用区間となるため、いかに高速性能に優れた最新型車両でもスピードを抑えた走行をしなければならない。
 E6系の在来線区間の最高速度は、これまでのE3系と同じ130km/h。今回の撮影ポイントである羽後境〜大張野間のS字カーブ区間に至っては、80km/hの速度制限もかけられている。E6は、持てる力の四分の一しか発揮できないことになる。
 これまでの「こまち」でもそうだが、秋田から東京まで全区間を通して乗ってみると、盛岡を境にしてスピード感の違いは歴然としている。特に下りの場合は、盛岡まで最高275km/hで疾走してきた分だけ、約半分の速度に落ちてしまう盛岡から先の区間では、まるで何かの事情で徐行でもしているのかと思ってしまうくらい。
 E6スーパーこまちに試練があるとすれば、実はその点ではないかと思う。東北新幹線区間でスピードアップした分だけ、相対的に在来線区間での速度が一層遅く感じられてしまう…と。
 しかし、それはそれでいいのではないかと、筆者は思う。
 秋田は(盛岡からこっちの岩手県区間も含めて)自然が美しい。息苦しいほど建物が密集した都会と比べても北東北の風景は人々の気持ちをほっこりとしたものにしてくれるはず。「スーパーこまち」の乗客も、雪解けが進めば線路端のフキノトウを見つけることも出来るだろう。
 E6系スーパーこまちが秋田路をのんびりと走るのはある意味では最高のサービスと、言えるのではないだろうか。
(文・写真/加藤隆悦)