文化遺産
Vol.4
ハイブリット・トレイン
JR東日本「リゾートしらかみ」 青池編成

 クルマの世界ではハイブリッド車も珍しくなくなってきたが、鉄道の世界ではこのごろようやく、ハイブリッドの走行システムを取り入れた車両が登場し始めたばかりだ。
 ただし、クルマと鉄道車両では同じハイブリッドという呼び名でも構造は少し異なる。
 クルマの場合はエンジンとモーターを交互に使い分けたりあるいは補完し合って駆動力にしているが、鉄道車両では、まずディーゼルエンジンで発電機を回し、その電力を蓄電池に貯め、あるいは直接モーターに流し、その発電機や蓄電池の電力でモーターを回して駆動力にしているのである。エンジンの回転を直接的には駆動力に使わない点がクルマの場合と異なる。
 電気で走っている鉄道車両なのだから、考えようによっては正真正銘の「電車」と呼ぶこともできるのではないだろうか。この動力方式そのものは決して目新しいものではなく、「電気式気動車」の名で昭和初期から存在していた。ただ、車体重量が重くなりがちなのが難点で、日本の軟弱なローカル線には不向きということで定着は見なかったようである。
 時代は下って、重量を抑えた機器も開発されるようになり、また、低燃費・空気汚染抑制・騒音抑制というような社会的要求が高まってきたこともあり、未電化区間列車の新時代走行システムとして、かつての“電気式気動車”の再登場に至ったのである。
 我々の身近であれば、JR奥羽本線・五能線を走る観光列車「リゾートしらかみ」青池編成が、国内の最新型のハイブリッド・トレインになる。従来型に比べ、10%の燃費低減、60%の排気中窒素酸化物の低減、停車時と発車時の20〜30%の騒音低減を見込んだ設計がなされているという。ざっくりとした表現をすれば、「環境に優しい列車」と言うことも出来るだろう。「リゾートしらかみ」は現在3編成で運行されているが、ぜひ青池編成に乗ってハイブリッド・トレインなるものを体感していただきたいものである。
(文・写真/加藤隆悦)