文化遺産
Vol.3
レールの規格
秋田内陸縦貫鉄道 笑内駅〜岩野目駅

 総延長94.2kmの秋田内陸縦貫鉄道は、戦前に国鉄阿仁合線として開通していた鷹巣〜比立内間(阿仁合〜比立内間は昭和38年の延長開通)、昭和40年代に国鉄角館線として開通していた角館〜松葉間、そして三セク移管後に開通した比立内〜松葉間と、区間によって建設時期が大きく異なる。
 時代によって鉄道建設の手法も変遷してくるわけで、枕木も木製のものもあれば最初からコンクリート製の区間もある。自然の地形に逆らわずにくねくねと曲がりくねりながら走る区間もあれば、直線的に築かれた築堤の上を比較的高速で走り抜ける区間もある。
 鉄道レールには様々な規格があるようで、大きく分けると、1mあたりの重量で表わす30kgレール、40kgレール、50kgレールなどがある。幹線などは最初から50kgレールを敷設するが、列車本数の少ない地方ローカル線の建設当時は30kgレールが主流だったようだ。レールは長年の使用で傷んでくるのでときどき交換をする。その交換の際には、ひとクラス上のレールを導入することが多い。
重いレールのほうが丈夫で狂いが生じることも少なく列車の乗り心地が向上するという利点がある。一度に全区間のレールを交換するのは時間もお金もかかるので、毎年少しずつ交換していく。
 そこで素朴な疑問。
 すべてのレールの交換が終わらないうちは古いレールと新しいレールが混在することになる。30kgレールと50kgレールとでは3cm以上の高さの違いがある。その“段差”はどうするのか。車輪で乗り越えられる段差とも思えないし。
 常々抱いていた疑問が内陸線笑内駅の近くで氷解した。規格の違う継ぎ目には段差を調節する専用のレールが使われ、高さの差は枕木の高さを下げることによってクリアしていたのだ!
 乗客の気づかぬところで、乗り心地改良のためにたいへんな手間がかけられているものなのだ。
(文・写真/加藤隆悦)