文化遺産
Vol.2
三線軌条
秋田新幹線(奥羽本線)峰吉川駅〜神宮寺駅

 秋田新幹線は1997年3月の開通だから今年で丸15年になる。来春には現在より高速で走れる新型車両も登場し、秋田〜東京間で10分ほどの所要時間短縮が見込まれている。秋田新幹線の「第二世紀」のスタートと言えようか。
 新幹線と言えば、本来はカーブとこう配を緩くし、道路とは立体交差にして踏切をなくした新線を建設してひたすら高速化を目指すものである。そんな中で秋田新幹線と山形新幹線だけは、既存の在来線を改良することで新幹線列車が在来線区間に乗り入れられるようにするという手法がとられた。速達性よりも乗り換え不要の利便性を第一義とした形だ。建設コストの抑制と早期完成の狙いもあったことだろう。
 在来線の改良だから、基本的にはレール幅を広げただけ。在来線は左右のレールの幅が1,067mmだが新幹線は1,435mmになる。レール幅さえ広げればとりあえず新幹線車両を通すことは出来る。ただし、その他の諸々の条件があるので秋田山形両新幹線には他の新幹線列車を入線させることは出来ない。
 新幹線と言いながら、踏切もあるし単線区間もあり、途中駅では「反対列車行き違いのため停車」という、およそ高速列車らしからぬ“のんびりさ”もある。
 奥羽本線秋田〜大曲間は、元々在来線の複線だったところを、片方を新幹線用にレール幅を広げ、単線の在来線と新幹線が並行して走るという形態になっている。この中で唯一、峰吉川駅〜刈和野駅〜神宮寺駅の区間だけは、片方の線路を三本レール(三線軌条)にして在来線列車も新幹線列車も走れるようにしている。この区間では秋田新幹線は複線となり、駅で反対列車待ちをすることもない。
 実はこの三線軌条は全国的にも非常に珍しく、日常的に営業列車が行き来する路線としては唯一の存在だ。途中駅(大曲駅)で進行方向が変わる新幹線というのも全国唯一だし、なかなか風変わりというか、ユニークな、秋田新幹線である。
(文・写真/加藤隆悦)