文化遺産
Vol.24
二ノ目潟・戸賀湾[にのめがた・とがわん]
男鹿市戸賀

 取材の仕事や休日のドライブで観光地・景勝地を巡ることが多いが、このごろの秋田のそれらには、精彩を欠くところが少なくないように思われる。
 震災以前から景気もパッとせず、旅館や土産物屋などの商売も思わしくなくて店を畳むというケースも少なくないだろう。それはある程度はやむを得ないことである。しかし、せっかく休日を楽しむつもりで出かけてきたのに、廃業した店や廃屋ばかりが目に飛び込んできたら、どんな気分になるだろう。ことに、秋田を代表する第一級の観光エリアであったはずの男鹿半島でその傾向が顕著であると感じるのは、私だけの気のせいだろうか。
 眼下に二ノ目潟、戸賀湾を望む八望台
は、“かつては” 男鹿半島の代表的な観光スポットであった。木造のちょっとシャレたデザインの展望台があり、「八望台」という名称自体も高松宮殿下の命名によるもので、ある意味、「由緒正しき」観光スポット。しかし、今はなんだか、「忘れ去られた観光スポット」のようである。展望台には、どこから持ってきたのか中古のボロボロの有料望遠鏡がヒモでくくられて取り付けられ、隣にある廃業した土産物屋は、心霊スポットのごとき廃墟をさらしている。これでは観光客も寄り付かない。
 本来、二ノ目潟と戸賀湾は、マール湖と呼ばれる爆裂火口湖として学術的にも貴重で、景観としても優れている。八望台からの日本海に沈む夕日の眺めはたいへん感動的であり、おそらく(これは希望的観測だけれども)風水で検証してみれば今流行りの「パワースポット」としても位置づけられるのではないだろうか。
 男鹿半島に限らないことだけれども、秋田にはいいものがたくさんあるのに、それが十分に生かされていないように感じられるのは、とても歯がゆいことだ。
(文・写真/加藤隆悦)