文化遺産
Vol.22
法体の滝[ほったいのたき]
由利本荘市鳥海町百宅

 法体(ほったい)とは、「僧侶の姿」というような意味であるらしい。旧鳥海町百宅にある「法体の滝」は、正面から見据えると、右上から左下に向けて裾を広げながら流れ落ちている。その姿形が袈裟を着た僧侶の姿をほうふつとさせることから、この名がついたのだろうか。
 4月の某日、私はその法体の滝に向けてクルマを走らせていた。ゴールデンウィーク初日の4月29日に鳥海山麓の滝を巡るアマチュアカメラマン対象の撮影ツアーが予定されていて、私がその案内役を引き受けていたから、念のために事前にロケハンをしておこうと思ったのだ。
 ロケハンしないでぶっつけ本番で撮影ツアーに出かけることもあるが、今度ばかりは心底、「ロケハンしておいてよかった!」と思った。
 たどり着けなかったのだ、滝に。雪のために。滝に至る道筋の最後の集落までは普通に走れたが、集落のはずれから先の道路の除雪は未だ手付かずだった。
 今年は豪雪だったのと、震災で燃料の供給も滞ったため、除雪作業もはかどらなかったのかもしれない。ゴールデンウィーク間近だから道は通じているはずだと決めてかかっていた自分が迂闊だった。
 残念だが今度のツアーでは法体の滝をはずしたルートで行程を考え直さないといけない。
 ここでふと思ったのだが、法体の滝接続道路しかり、あるいは八幡平アスピーテラインなども、春になると除雪車をフル稼働させて道路の開通を急ぐ。生活道路であれば除雪は万全を期してもらいたいが、観光主体の道であれば、開通時期が多少遅れるとしても、自然に解けるのにまかせておくというわけにはいかないものだろうか。自然探訪のために燃料を大量に消費する重機を使って除雪を急ぐ…。そんな従前の考え方のままでいいものか、今度の震災では少しばかり考えさせられた。
(文・写真/加藤隆悦)