豚軟骨・ジャージー牛肉・ホル中 |
あゆかわのぼる |
昨年夏、毎年お邪魔する能代市の子供七夕を見に行ったとき、地元の知人に、能代駅前にある『千両』という居酒屋でご馳走になった。 |
土田牧場では、牛は長く暮らしてきた家族同然。それではつれなかろう、ということで食べてみた。そしたらこれが、思いの他美味い。それでお客さんに食べてもらうと喜ばれた。 3年くらい前に訪ねたとき、「食べてみて」と勧められてご馳走になったら、すっかりステーキ気分であった。 しばらく行っていないが、牧場の人気メニューになっているかもしれない。 こういう例をもう一つ。 横手市沼館の『なお古』蕎麦屋。 私はサラリーマン時代に4年間横手で過ごしたが、その時取り付かれた『麺屋』が4軒あって、それは、湯沢のラーメン屋『大元』。ここはラーメンの味だけではなく、主人夫婦の暖かい雰囲気がもう一つの味。秋田市辺りからわざわざ車を走らせて食べにくる客が多い。 西馬音内の蕎麦屋の『小太郎』は、亡くなった親父さんが得も言われぬ雰囲気を持っていたし、おばあちゃんの気っ風も魅力。 ものがなくなれば店を閉めるので、時々出羽グリーンロードを車で走り、辿り着くと終わっている、ということもあって、それも引きつけられるもとになる。 それから横手の『佐藤そば屋』。ここはおろし蕎麦が美味い。 そして『なお古』蕎麦屋。 この4軒にはよく通った。いや、今でも時々、檀家回りのように出かけて行っては食べる。 皆さんも、近くに行ったら寄って食べてみてほしい。いずれの店も満足を請け合う。 そのうち『なお古』の売りは『ホル中』。 中華そばの中に煮込んだホルモンが入っているホルモン中華そばである。 中華そばそのものが美味い。 煮込みホルモンも美味。 私は寄ると、ホルモンを食べて、その他にタッパーに分けてもらって、家に帰って晩酌の肴にする。妻も病み付きになって、私が県南に仕事で出かけると必ず、なお古そば屋のホルモンをお土産にねだる。 この『ホル中』、全く偶然、というか、客のわがままが、誕生の発端だったという。 かつては、中華は中華、ホルモンは酒のつまみで出していた。ところがある時、中華そばを食べていた客が、隣で酒を飲んでいる人の肴のホルモンが美味そうで注文し、中華そばの中に入れて食べはじめ、 「これは美味いッ!」 と叫んだ。 やがてそれを真似る人が出始め、口コミで広がり、気がついたら店の看板メニューになっていたという。 これらはいずれも、その地域、そこの店ならではの、知る人ぞ知るまさに一級品。 B級グルメがどうしたとか、焼きそばや貝焼きこうしたとか、よく分からない新しい食の開発がかまびすしいが、どこか胡散臭い気がするのは、こういう“食の広がりの基本”を忘れたカラ騒ぎに見えたり、聞こえたりするせいかもしれない。 料理人が能書きを並べたって、食う側の食指はそれ程動かない。たいていの場合、『食』は食う人の評価と口コミが決め、育てる。 |