会長の言葉

とどかぬ願い ─それでも訴えつづける─ 会 長 菅原 三朗

 今年も恒例のフォーラム「東北は訴える!インフラ整備これでいいのか」が7月27日郡山市のホテルで開催され、東北各地から約900人が参集した。
 このフォーラムの歴史は古く、昭和58年7月に仙台市において開催以来、東北各県で開催されるようになり今年で28回を数えている。
 当初は「東北地方公共事業拡大推進総決起大会」と言う名称で開催をされていたが、一部評論家やマスコミの誤解と偏見による、公共事業不要論が叫ばれ、公共事業=悪というイメージができつつあったので、平成9年からフォーラム「東北は訴える!インフラ整備これでいいのか」に名称を変更した。
 東北地方は「白川以北はひと山百文」と言われた明治以来、後進地域のイメージがつきまといつつも、高度成長時代を経て、「国土の均衡ある発展」が叫ばれる中で徐々に整備が進んできた。しかし広大な地域と豊かな自然環境に恵まれながらも、南北に奥羽の脊梁山脈が走り東西を二分する急峻な地形に都市が点在しているため、それを克服して活力ある経済圏を築いていくためには、中核都市、産業集積群、港湾、空港等を有機的に連結する高速交通ネットワークの完結は勿論のこと、大幅に遅れている基礎的社会資本整備を促進しようと、長年に亘り事業量の拡大と予算の傾斜配分を訴えつづけているが、依然として願いはとどかない。大都市圏においては、地方の実態に対する認識不足により、地方への公共投資は無駄であると言った声さえが聞かれる。
 特に2000年以降の竹中構造改革により、公共事業は財政再建政策において歳出削減のスケープゴートとされ毎年大幅削減が続いたが、これにより地元負担力の弱い東北地方は逆に先進地域よりも削減幅が大きくなり、格差は益々拡大する結果となってしまった。

 この構造改革による公共事業の削減は、ひとり建設産業のみならず社会全体が疲弊し、自殺者数、失業率、倒産件数、生活保護申請件数、そして犯罪件数が大幅に増加していった。
 政権が変わり、こうした間違いが改められるのではと密かな期待もあったが、逆に「コンクリートから人へ」と公共事業費は大幅削減が断行された。公共投資に代えて社会保障施策で景気回復を図ると言うことは間違いも甚だしい。
 地方経済は公共投資に対する依存度が極めて高く、公共投資が積極的に行われた平成3年からの10年間を見ると、依存度の高い東北は経済成長率が18%と先進地域より高いが、平成8年からの10年間では全く逆の傾向になっている。
 フォーラムの基調講演で政治評論家の森田実氏は、政府の財政再建偏重政策を批判し「経済再生のかぎを握るのは公共事業の推進である」と強調した。また、「日本の人口のうち東京に住んでいるのは1割に過ぎず、残り9割は公共事業と農業で成り立っている地域に住んでいる。景気浮揚を図り、雇用を安定させることが出来れば、経済再生の次のステップに進むことも可能であり、そのかぎを握るのは公共事業の推進である」と講演を締めくくった。
 地方の実情を無視し、政局がらみの経済や財政の論理だけで、非常識な公共事業の削減を繰り返せば日本から地方が消えてしまう。
 われわれは訴えつづけなければならない。