文化遺産
Vol.13
桃洞の滝[とうどうのたき]
北秋田市奥森吉桃洞渓谷

 ひとくちに滝と言っても姿形は様々で、大きいものから小さいもの、また、クルマで気軽に行けるところから山歩きに不慣れな人には簡単にたどり着けない難攻不落の滝まである。いずれにしても、滝には日本人の琴線に触れる何かがあるのか、古来より多くの人が滝を目指して渓谷を遡上し、また、遊歩道なども整備されてきた。カメラを趣味にした人が手始めに撮ってみる被写体としてもおあつらえ向きだし、また、健康増進のために休日ごとにハイキング感覚で滝探訪をしてみるのも面白いだろう。
 秋田県には見るべき滝が多い。休日ドライブで気軽に訪れることのできる滝だけでも県内各地に点在している。その一大集積地が森吉山麓。無名に近い滝まで入れたら数えきれないが、「絵になる滝」だけでも桃洞の滝、三階の滝、安の滝、幸兵衛滝などが挙げられる。険しい地形の中に点在しているので、一日で全部を回るというわけにはいかないが、山奥にもやっと遅い春が訪れたこれからの季節、天気のいい休日には滝巡りを楽しみたい。
 さて、この桃洞の滝。国民宿舎森吉山荘からさらに山道を進み、車道終点にある森吉山野生鳥獣センターにクルマを止めると、そこから桃洞渓谷沿いに歩いて一時間ほどで到達できる。かなりの山奥には違いないが、渓谷沿いの遊歩道はほぼ平坦で、子ども連れでも気軽に自然探訪を楽しめる。(虫除けスプレーは持参したほうがいい)
 珍しい形をした滝であるが、この桃洞の滝の「桃洞」とは何か? それはどうやら、この滝の形から連想されるあるものに由来されるようだが、たとえ知っていても、あるいはうすうす気づいていても、あまり大きな声では話さないほうがいい類いの話題かもしれない。知らされなければ気づかない人でも、言われてみれば「あ、なるほど!」と、ピンと思い当たるものがあるハズ。先人は、なんとも単刀直入なネーミングをしてくれたものである。
(文・写真/加藤隆悦)