会長の言葉

コンクリートから人へ 会 長 菅原 三朗

 公共事業を取り巻く環境は、前政権当時より、竹中構造改革の歳出削減の目玉として、大巾削減が続いてきたが昨年の政権交代により、新政権のキャッチフレーズである「コンクリートから人へ」「公共事業から福祉へ」の方針のもと、公共事業は更に大巾削減が断行された。
 只違いは前政権当時は高度成長時代からの延長線上で、永年に亘る様々なシガラミの中で5 0年たっても完成しない八ッ場ダムに象徴されるように、不要不急の巨大プロジェクトをすべて温存しながら、地方の小規模事業まで一律に削減されつづけ、これにより遅れている地方と先進地域との一層の格差拡大の要因にもなってきたのではないかと思われる。
 新政権では全国143すべてのダムの見直しをはじめ、高速道路の新規事業の原則停止・全国6路線の高速道路4車線化の全面凍結・東京外環状道路の着工凍結など、不要不急の巨大プロジェクトから先に大巾削減をされると言うことは、公共事業に対する取り組み方に大きな変化が感じられるところである。
 10年度予算案の公共事業関係費は09年度当初予算比で18.3%減の5兆7,731億で、6兆円割れは1978年度以来32年ぶりの水準である。減少の額と率はともに構造改革路線に転じた小泉政権下の02年予算を上廻り過去最大となっている。
 政府はこのような中でも国から地方への予算を手厚く配分するため、国交省・農水省の両省は既存の補助金や交付金を統合した新たな交付金を創設、又直轄事業負担金のうち維持管理費分を原則廃止するとした。しかしながら民主党が重点要望で半減を求めた農業農村整備費は63.1%減の2,129億円に激減しており、本県でも計画的に推進している圃場整備事業費への重大な影響が懸念されるところである。
 「コンクリートから人へ」「公共事業から福祉へ」と言うのであれば、福祉充実向上の一丁目一番地は遅れている地方の基礎的な生活基盤整備の促進と、安心安全のための防災対策の推進が、すべてに優先実施されなければならない、不可欠な前提条件である。公共事業を今後どこまで削減をつづけていくのかわからないが、これまで整備を続けてきた既存の社会資本の膨大なストックの維持更新需要は年々増大するのである。
 リバーフロント整備センター理事長の竹村公太郎さんの言葉を借りれば、文明を支える要素は安全・食糧・エネルギー・交流であり、これらを支える下部構造がインフラストラクチャー(社会資本)である。特に安全については大雨で水があふれる洪水氾濫区域に人口の50%が集中し、また資産の75%が集中している我が国の現状や、近年の異常気象による洪水災害などが全国で発生している。国土を守るには安全に対して手を抜いてはいけない。着実な整備が必要である。人間は足腰が弱くなったら車イスに頼れるが、文明は下部構造が衰えれば同時に滅びるのである。