会長の言葉

地方の立場 会 長 菅原 三朗

 戦後、初の政権交代により9月16日民主党鳩山政権が誕生した。就任早々、鳩山総理は国連気候変動サミットにおける「温室効果ガスを1990年比25%削減」を表明、各国から大きな拍手を浴びるなどその存在感をアピールし、また米オバマ大統領をはじめ中国・ロシア・韓国などとの首脳会談を実現し、国際舞台へ華々しくデビューした。一方国内においては、各省担当大臣がマニフェストにかかげた難問に取り組みF1レースの選手のように一斉にダッシュ、その行動や発言は連日大きなニュースとして報じられている。
 国の発展にとって欠かすことの出来ない地方の社会基盤整備が、小泉・竹中構造改革により公共事業は「増税なき財政 再建」のため歳出削減のスケープゴートにされ、長年に亘り事業量の大幅削減が続き公共事業は無駄という間違った観念が形成され、しかも規制緩和や無差別な市場原理による不適切な公共調達と相まって、地域防災の担い手である地元業界の疲弊のみならず都市と地方の格差拡大を招き、地方経済の衰退や地域コミュニティーの崩壊という、国の発展とは逆の事態を引き起こしてしまった。
 このような中で新政権の社会基盤整備の主な政策は、公共事業の見直しとして八ッ場ダム・川辺川ダム建設を中止するなど、全国143ヶ所のダム事業を治水や利水に本当に必要であるかどうかの再検討をはじめ、国の大型直轄事業を全面的に見直す。また費用対効果を厳密にチェックした上で必要な道路をつくる。国直轄事業の地方負担金廃止については、道路・河川・ダムなどの国直轄事業の負担金制度を廃止し、約1兆円の地方負担をなくす。高速道路の原則無料化については(予算1.3兆円)割引率を順次拡大、影響を確認しながら段階的に実施するとなっている。今後の公共事業のありかたについては、八ッ場ダム・川辺川ダムの中止が公共事業見直しの入口であり、各種大型の公共事業は計画決定後も5年毎に、時のアセスメントを見直していく必要があると言う。しかし現段階では先行きどうなるかは全くわからない状況である。
 小泉・竹中構造改革による地方の疲弊・格差拡大の大きな要因の一つは、公共事業全体を一律無差別に削減を続けたことにより、絶対量の少ない整備の遅れている弱い地方ほどより大きな被害を蒙ったことである。
 今後の国の財政再建や少子高齢化社会の観点からも、不要な支出を抑えるための公共事業の見直しが必要であるならば、これ迄のような全体の無差別一律削減をやめ、不要不急の大型工事の中止など適切な選択により、地方の再生と格差是正のために、実情に応じた社会基盤整備の促進が必要であり、本県のような少子高 齢化率の高いしかも整備の遅れている地方には当然傾斜配分をされるべきである。
 新政権のキャッチフレーズが「コンクリートから人へ、公共事業から福祉へ」であるなら、その福祉を充実させるためにも遅れている地域の基礎的な基盤整備の促進をはかることは、不可欠な前提条件である。