会長の言葉

格差と無駄 会 長 菅原 三朗

 公共事業等を徹底的に削減し、小さな政府を目指した「小泉・竹中構造改革」が打ち出した「増税無き財政再建」は、政策的に大きな間違いを犯したのである。
 政策を正当化するために、公共事業が槍玉に挙げられ、財政問題を先送りするスケープゴートにされたといっても過言ではないだろう。
 「増税無き財政再建」から、公共事業は無駄という間違った観念が世の中の常識として形成され、市場原理主義に経済をゆだね、その産物が「格差」である。
 その「格差」が国全体を暗く憂鬱なものにしてしまった。
 個人所得の格差が平等社会を崩壊し、都市と地方の格差が地方社会の崩壊を引き起こした。公共事業の大幅な削減が地方経済の疲弊や地域コミュニティーの崩壊という国の発展を危うくする事態を引き起こしてしまった。
 このような背景の中、地方の建設産業は、厳しい経営環境下にも関わらず、良質な社会資本整備を目指し、また、地域の基幹産業の一つとして、社会資本整備の担い手としてだけではなく、地域の経済・雇用に大きく貢献しているとの自負のもと、災害時における初動活動や冬季交通の確保等を通じて、県民の安全・安心の確保に積極的に取り組んできた。
 秋田県の平成20年度投資的経費はピーク時の平成8年度の37%まで落ち込み、地方の建設産業の経営状況は限界を超えている。
 一方、地方の少子高齢化社会は、中山間地に住み、村を守り、国土保全に努めており、これからは、高齢化社会と共存する社会資本整備、福祉・医療につながる地方版公共投資が重要である。
 地方の再生と格差是正に向けた社会資本整備の在り方が今問われている。
 平成21年度予算において、道路特定財源制度が廃止され、変わって、道路を中心にしつつ、地方の実情に応じて、関連する他のインフラ整備やソフト事業も対象とした「地域活力基盤創造交付金」が創設された。
 これは、高齢者住宅前の除雪や、公共施設内道路のバリアフリー化、交通安全・防犯ボランティア活動支援、スクールバス、コミュニティーバス等の導入等々「効果促進事業」と本来の「地方道路整備事業」の使途割合の制約があるものの、まさに地方が抱える課題解決に大きな効果を期待するところである。
 今後、本来の道路整備費は減少傾向が続くと思われるが、高齢化社会を迎えた地方に住む人々の安全・安心の確保や、格差のない豊かな生活実現のための社会資本整備は今なお重要な課題であり、地域経済の再生のため、交付金の継続・拡充を望むところである。
 わが国は、税収の二倍の国家予算を組んでいる支出超過の国家である。税収が不足するのであれば増税するしかないのは自明ではあるが、現在の経済の状況から増税するわけにもいかない。不用な支出を最大限に抑えるというのも正論ではある。
 しかしながら、「先ず無駄使いの徹底的削減」と言っていることは大いに気になる。
 またぞろ「無駄な公共事業の削減」か。
 これ以上の公共事業の削減は何としてでも止めなければならない。