文化遺産
Vol.3
川原毛大湯滝[かわらげおおゆだき]

湯沢市・高松字高松沢

 湯沢市の湯沢横手道路須川インターで降りて、泥湯温泉方面を目指してクルマを走らせてみよう。三途川渓谷にかかる三途川橋を渡ってすぐに右に分岐する林道に分け入る。林道終点の駐車場にクルマを止めて、そこからは緩やかに下る山道を徒歩15分ほど。やがて、木々のあいだから滝の瀬音が聞こえてきて、姿容の美しい滝が現われる。それが川原毛大湯滝だ。
 流れに勢いがあるのか、岩盤を伝って流れ落ちる筋の他に、ちょうど温泉の打たせ湯のように、中空を流れ落ちる筋もある。
 滝めぐりや滝の写真を好むカメラマンであればぜひとも一枚は撮っておきたい滝だが、この川原毛大湯滝の最大の特徴は、その名の通り、流れが水ではなく湯であることだ。この滝の上流には、かつて硫黄鉱山もあった火山地形の「川原毛地獄」がある。そこから天然温泉の硫黄泉の湯が流れ出しているというわけだ。つまり、川原毛大湯滝の滝壺は、100%天然温泉の露天風呂ということになる。
 地中から湧き出してから滝壺に流れ落ちるまでにやや距離があるため、湯温はそのときどきの気温に影響されて、おおむね、7月上旬から9月中旬あたりまでがちょうどいい“湯加減”となる。その滝壺がまた、わざわざ誂えたかのように、露天風呂として浸かるのに深さも広さもジャストサイズ。中空を流れ落ちる筋にカラダを当てれば、居ながらにして打たせ湯も楽しめてしまうのだ。
 かつて、川原毛大湯滝は、訪れる人もまばらで、知る人ぞ知る超穴場的な存在だった。その“秘境ムード”が逆に注目を浴びて全国版のテレビなどにも取り上げられるようになり、今ではなかなかのにぎわい。ムカシはみんな素っ裸で天然露天風呂を楽しんでいたものだが、最近は地元観光課でも水着着用を推奨しているようだ。ハダカで入ると周りから白い目で見られるだろうか。そのほうが似つかわしいように思われるのだけど。
(文・写真/加藤隆悦)