会長の言葉

金融経済懇談会 会 長 菅原 三朗

 4月13日、日銀白川総裁が来秋され県内の産業界・金融機関の代表による、金融経済懇談会が開催され、私は秋田県建設産業の状況について、概略次のように申し述べた。
 1960年代に始まった経済の高度成長とそれに続く日本列島改造論等により国土の均衡ある発展が叫ばれ、本県でも社会資本整備のための公共事業が積極的に行われた。
 その後1973年のオイルショックや狂乱物価による資材の高騰、或いは1980年代以降の低成長期における建設業冬の時代もあったが、バブル崩壊後の2000年ぐらい迄は、おおむね好況不況の循環型で推移をしてきた。この時代の本県建設産業は県民総生産の11%、雇用従業者数の13%を占める基幹産業として、地域経済の活性化をはじめ県政推進の一翼を担ってきた。
 しかし、2000年代に入り財政再建を目指した国の構造改革により、公共事業は歳出削減のためのスケープゴートとされ経済財政諮問会議の有無を言わせぬ骨太の方針により、以来公共事業は毎年大幅な削減が続いてきた。更にこれに追打ちをかけたのが地方分権三位一体改革による地方財政の悪化である。
 その結果、全国的にも公共事業は半減をし、2007年度の本県の公共投資は2,613億円で民間投資と合わせても4,887億円で、1996年の53%であり県発注工事だけではピーク時の31%まで激減をしている。一方業者数は1998年度(許可業者)5,732社をピークに2007年度は4,748社(-17%)と減少はしているものの、全くの供給過剰構造であり、しかも全国的な入札制度の不備等もあり、少なくなった工事量を更に採算を度外視したダンピング受注が横行し、利益率の低下・下請企業・末端労務者へのしわ寄せなど企業経営を圧迫し、更に金融機関の融資姿勢の厳格化が追打ちをかけ、業界全体が疲弊をし、2007年度の県内建設業者の倒産件数も59件で全産業の54%を占めており、公共事業への依存度の高い本県建設産業は極めて厳しい経営環境に直面をしており、このことはひとり業界のみならず地域経済や雇用の面でも、大きく影を落としていることは否めない事実である。
 このような状況から脱出するために、価格と品質が総合的に優れた公共調達制度実現のため、全国的に入札制度の抜本的改革が訴えつづけられてきたが、2005年に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の制定により、ようやく昨年度より国交省をはじめ地方自治体も改善に取り組んでいるが、まだまだ充分とは言えない状況である。
 公共事業の削減が続く中、今一つの大きな課題は、これ迄整備されてきた社会資本の膨大なストックが高齢化時代を迎えている。特に県内でも国・県・市町村管理による2,000以上に及ぶ橋梁やその他構造物が老朽化をし、耐用年数を迎えたものも数多くあり、早急適切なメンテナンスによる長寿命化をはかっていかなければならない必要に迫られており、そのノウハウを持つ地元建設業の出番であると思う。
 本県のインフラ整備はまだまだ立ち後れており、日本海沿岸東北自動車道や東北中央自動車道など隣接県との早期開通による高速道路ネットワークをはじめ、対岸貿易活動拡大のための秋田港をはじめとする港湾の整備、又県民の安全で快適な生活環境のための下水道の整備促進、特に雪国の宿命とあきらめることのない降雪期における安全な通学路の確保をはじめ、救急医療や緊急車両の常時通行可能な克雪道路の整備、更には各種自然災害に対する防災・減災のための道路・河川の整備など必要不可欠な事業は計画的継続的に推進されることが重要であり、これ以上の公共事業費の削減はもはや限界である。
 今後の内需拡大による地方再生・格差是正のためにも、地方公共団体の財政基盤を支えることが重要であり、中・長期に亘る国直轄事業・補助事業に関し地方の財政負担に対する国の協力な支援・抜本的対策が不可欠である。