会長の言葉

信頼回復のとき(下) 会 長 菅原 三朗

 2001年以降の小泉構造改革により、公共事業は益々削減が続き加えて入札契約制度の変更等により受注競争が一層激しくなる中で、今度は福島・和歌山・宮崎県などで知事を巻き込んだ官製談合事件が発覚し、又々国民の大きな顰蹙を買うと同時に、地方自治体における公共工事の調達のあり方が大きく問われることとなった。
 この時こそ地方自治体の公共工事の調達はどうあるべきかを徹底的に議論をし、正しい方向を見い出す絶好の機会であったにもかかわらず、全国知事会はそれをやらずに、ガイドラインとして一千万円以上の工事はすべて一般競争入札にすべきであるとした。これにより供給過剰のアンバランスの中でダンピング競争が全国に蔓延し、公共工事に依存度の高い地方業界の疲弊はその極みに達し崩壊の危機に直面している。このことは独り業界のみならず地域経済の活力の喪失や雇用の面にも大きく影を落とし、安全安心な地域づくりの停滞など、格差拡大の大きな要因になっていることも否めない事実である。
 このような事態を打開し公共工事の品質を確保するとともに、正しい調達のあり方も確立していかなければならないと、有志の国会議員による「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」が議員立法により制定され、ようやく価格だけでなく品質(技術)との両面から評価をすべきであるという調達制度へと改正されつつある。

  「品確法」制定後四年目の見直しの時期を迎え、国土交通省は本年度から入札の調査基準価格を予定価格の82%程度まで引き上げたが、これについてはダンピング防止では業界と考えを同じくしているが、あくまで品質の確保が主眼であるとしている。しかし本年度の全国各地区ブロック会議でも、施工業者の適正な利益確保のためにもこの調査基準価格は予定価格の90%まで引き上げるべきであると強く要望している。又秋田県建設業協会が第三者機関に委託をした本年度のコスト調査においても、公共工事の損益分岐点は予定価格の90%付近となっている。国土交通省は是非とも今一段の引き上げにより地方の公共工事発注機関にその範を示すべきである。
  この「品確法」の推進によりようやく公共工事の正しい調達のあり方が、よみがえってきた。遅きに失した感は有るものの今こそ発注者・受注者(施工者)ともその原点に立ち返り、公共事業の品質の確保の促進とともに施行者の適正な利益確保もはかられる制度の確立とともに、両者の新しい時代のパートナーシップの再構築による公共事業本来の正しい執行を推進することにより、今こそエンドユーザーの信頼を回復すべきときである。