会長の言葉

信頼回復のとき(上) 会 長 菅原 三朗

 今年度の東北建設業協会連合会ブロック会議は10月24日、宮城県の当番で仙台市に於いて開催された。ブロック会議前段の地域懇談会では、国交省と各県正副会長により、今後の地域の中小建設業者が経営を持続していくための方策について、フリートーキングが行われた。
 私は所信の一端を申し述べたが、地域の公共工事の施工の担い手として長年にわたり、その推移を見てきた者として、かつて昭和30年代、40年代は国民世論としても地域のインフラ整備は喫緊の課題であり、特に道路整備の進捗度合はその地域の文化のバロメーターとまでいわれた。
 社会資本の整備を促進し、経済・産業・文化の振興・生活水準向上のための公共事業は、多くの地域からの強い要望にもとづいて行われてきたものであり、そのため発注者も受注者も大きな社会的使命と誇りをもって、事業の遂行にたずさわってきたものである。
 公共事業(工事)には国土発展のための、インフラストラクチャー(下部構造)を支えていくのだという品位(品格)があったと思う。従って発注者も受注者(施工者)もお互いに協力しながら、よりよい事業の執行を目指した共通認識(パートナーシップ)があり、又現場の施工においても発注者側の担当者と現場の主任技術者とは設計思想の共通認識のもとに、お互いに技術の研鑽をしながらより品質の良い工事の完成に向けた情熱と良好なパートナーシップがあった。

  しかし、バブルの崩壊による不況克服と景気浮揚のための公共工事に対し、大手ゼネコンは工事受注のため地方自治体の首長等に対しての、なりふりかまわぬ賄賂攻勢が大問題となり、知事や市長の摘発が相次ぎ国民からは大きな批判を浴びた。
 また一部の評論家の誤解やマスコミの誤った報道により、公共事業はムダなものが多くそれが国の財政を悪化させており、又入札・契約制度も不透明であるなどといわれ、これにたずさわる建設業者は悪であり公共事業と建設業界に対する不信は完全な世論となってしまった。
 このような間違った世論に対し我々地方の業界は、県民・地域住民の不信を払拭し信頼を回復するため、様々なイメージアップ活動を展開してきた。秋田では15年にも亘ってランドアート(市民参加の建設フェアー)の開催や、ボランティア活動の一環としての「子供見守り隊」現場への往復車にステッカーを貼付するなどをはじめ、地域の基幹産業(県民総生産の10%・雇用の12%)としての自負のもとに、地域の安全・安心の確保のため災害発生時など一旦緩急ある時は、地域住民の生命財産を守るため率先して活動を展開してきたところである。しかし、我々地方業界の心をこめたイメージアップ活動や社会貢献活動までも、一般の人々には単なる業界のパフォーマンスではとしか受け取られなくなってしまった。
《つづく》