文化遺産
No.74
旧鮎川小学校

由利本荘市南福田字上鳴瀬1-3

 旧由利町北端、子吉川支流の鮎川沿いの南福田地区にある旧鮎川小学校は、かつてどこにもあった懐かしの学校建築である。近年の少子化にともなって由利地区に三校あった小学校は統合されて現在由利小学校となっている。
 旧鮎川小学校の沿革が書かれた記念碑が小学校の前庭に残されている。それによると、この小学校は明治7年(1874)、現在地よりやや上流部にある町村の瑞光寺を仮校舎として開校した。同26年(1893)11月22日に東鮎川字山崎に校舎を新築移転し鮎川小学校となった。

さらに昭和29年(1954)、鮎川中学校がこの鮎川小学校がある土地に新校舎の竣工をみた。その後、昭和45年(1970)にここが由利町立鮎川小学校となって平成16年3月に閉校となるまで地域の学び舎となった。小学校は130年の歴史に幕を閉じたが、この間の卒業生は3155名を数えるという。
 校舎は築後50年を経ているが、地元産の良質な杉材を使っているため、今も堅牢そのものである。木造平屋切妻の校舎が三棟と体育館が南北に並び、それぞれ渡り廊下で結ばれ、分舎化された校舎の切妻と瓦葺きの屋根が非常に落ち着いた雰囲気を醸し出している。学校敷地は24.504平方メートル、校舎面積は8.272平方メートルである。
 校舎の内部もまた昭和の教育遺産ともいうべき立派なもので、純和風の礼法室や音楽室、木質の体育館、それに外部の日本庭園、桜並木などまわりの環境ともよく馴染んでいる。現在、文化遺産として保存と利活用が卒業生はじめ地元の有志の方々によって検討されている。

(取材・構成/藤原優太郎)