文化遺産
No.71
旧六郷小学校(模築・現学友館)

仙北郡美郷町六郷字安楽寺122

 県道角館・六郷線の沿道に立つ瀟洒な建築物の学友館は、旧六郷小学校の洋風建築を模して建てられたものである。正確には近代化遺産とはならないかも知れないが、精緻な模築としては当時の様子を知る重要な遺構建築といえよう。
 昭和6年に竣工をみた旧六郷小学校はこの地域を代表する教育の中心地であった。現在、美しく模築された学友館は旧六郷小学校の正面建物を忠実に復元したものである。この正面玄関両脇から左右に校舎があり、さらに奥の方にコの字型に校舎が延びていたという。ファサードの車寄せやバルコニー、大型の窓の形式など、きわめてハイカラな造りである。

 学友館の名称の由来は、明治24年(1891)に設立された六郷小学校の同窓会が「学友会」と命名されたことによる。この学友会の会員は六郷小学校同窓会にとどまらず、千屋村、畑屋村(現美郷町千畑)や飯詰村(現美郷町仙南)出身者も少なくなく、熊谷松陰の交文社、岩屋順太郎の立志斎の両塾で学んだ人たちも多かったという。
 学友会の活動は地域の青年教育奨励や風俗矯正などにも及び、会誌の発行のほか、会員相互の親睦から学術研究など、まさに地域文化の発信地となった。明治39年(1906)には会員からの募金と町からの援助を受けて六郷小学校内に図書館が設置された。その管理運営には学友会員があたり、蔵書も2200冊に及ぶ県内有数の図書館であった。
 現在の学友館はその学友会の伝統を受け継ぎ、歴史民俗資料館と図書館として利用されている。昭和初期の洋風建築は真昼山ふもとの六郷扇状地に燦然と輝く文化の殿堂であったことはまちがいなく、当時、この校舎を拠点に学友会の活動に勤しんだ方々にとっては単なる復元建築物ではなく、故郷の心象風景と重なっていることだろう。

(取材・構成/藤原優太郎)