文化遺産
No.67
山内家住宅

湯沢市吹張二丁目1番4号

近代文化遺産

 湯沢市の羽州街道沿いにあり、市内の伝統的な町屋の中でも最大級の規模をもつのが藩政期から昭和まで呉服商を営んだ山内家である。山内家は、安永年間(1780頃)佐竹藩士山内市兵衛家から分家した御用商人の家柄であったという。
 本住宅は7代当主の時の建築で、昭和7年、東京の建築士(秋田出身)の高堂徳治が設計し、同九年頃には竣工をみていたようだ。佐竹南家の城下町、外町南端の旧羽州街道沿いにひときわ目立つ商家造りとなっている。 主屋は、木造二階建、建築面積258.34平方メートルで、梁間5間半、桁行12間半の切妻造妻入二階建て、桟瓦葺の建物である。通りに面し梁を数段重ねた妻面や正面と側面に取り付けられた多くの庇などが精緻で変化に富む外観を形成。さらに瀬戸で焼かれた深緑の陶器釉薬瓦で葺かれた大屋根はこの地区では他に見られない珍しいもので大きな鬼瓦にも目を奪われる。内部もまた柱や梁など総じてケヤキ材をふんだんに使った重厚な造りとなっている。建物全体、簡素ながらも細部の部材にこだわりを見せる質実なものである。

 さらに、本住宅の敷地内には軽快な意匠でまとめられた裏座敷のほか、文庫蔵や道具蔵、商品蔵、穀蔵などの重厚な土蔵群が建ち並んでいる。今も居住空間となっている裏座敷は木造一部二階建、面積145.15平方メートル。裏手が梁間2間半、桁行6間半の平屋建で、表側が梁間4間、桁行7間半の切妻造、平入二階建、L字型の建物となっており、寄棟造の桟瓦葺、真壁造の外壁、一部下見板張とする軽快な意匠でまとめられている。そのほか、梁間4間、桁行7間の切妻造、妻入二階建ての文庫蔵は、開口部に観音開きの扉を持ち、土蔵全体が耐火金庫の役目を果たしていた。
 この山内家住宅は、歴史的景観に寄与しているもの、あるいは造形の規範となっている(裏座敷)ことにより、平成19年10月に登録有形文化財(建造物)となり、現当主は山内慶信氏である。

(取材・構成/藤原優太郎)