同ホテルの建築には、秋田、青森、岩手の三県から選りすぐりの宮大工80人を集め、その腕前を競わせたと伝えられる。木造二階建て、地下一階の本館は天然秋田杉など地元産の木材をふんだんに使い、基壇部の石垣や大屋根、車寄せの庇などに洋風ホテルのような特徴があり、全体の印象としてヨーロッパの山荘を思わせる。
内部は、吹き抜けの玄関ホールに樹齢65〜85年の杉丸太を配し、玄関正面に樹齢約100年のブナの柱が立っている。本館内部空間で最も特徴的な玄関ホールには、同じ直径の杉丸太を二重の竿縁に使った杉皮の天井意匠や繊細な組子欄間などが見られ、「秋田杉のホテル」として重厚かつ緻密な高度な建築の印象を保っている。さらに玄関の踏込板には欅材が、土間の石畳に十和田湖畔の石が敷きつめられている。日本間の客室は各部屋とも床の間、床脇がしつらえられ、それぞれ多様な技術が施されている。なお、十和田ホテル本館は、平成になってから保存のための大幅な修復工事がなされ、同15年に「再現が困難な建築物」(登録基準3)の登録有形文化財に指定されている。 |