文化遺産
No.63
鳥海川第二発電所・水路橋

由利本荘市鳥海町下直根字土剥11-2

近代文化遺産  東北電力(株)鳥海川第二発電所へ送水するため昭和12年(1937)に建造された送水路である。下直根岡田代から子吉川右岸台地を進む道路は百宅下流にある袖川発電所に通じており、その途中で高架水路と交錯する。これが鳥海川第二発電所の水路橋である。
 全長149.1mに及ぶ水路橋はRC造り、屋根防水層、箱形構造で、9.091m間隔に設けられた16本の橋脚に支えられ道路を跨いでいる。水路部分は高さ2.939m、幅3.030m(10尺)であり、底面の厚さは40cm、側面の橋脚位置に幅80cm、橋脚間に幅30.3cm(一尺)の柱形が造り出されている。
現在、所々剥落した部分にモルタル補修の跡が見られ、道路を跨ぐ橋脚一スパン間が昭和48年(1973)にRCによって補強されている。見た目は現代的な感じもするが、随所に古びた貫禄を見せる立派な水路橋である。
 さらに水路橋に沿った森中の道路をたどると配水池に出て対岸に猿倉地区を見下ろす山の突端に出る。そこから大きな導水管が斜面を下っており、鳥海山麓の地形を有効に生かした水力発電所の見本を見るような感じである。傍の高台に発電所職員が設置した「水分(みくまり)神」の石碑もあり、鳥海山が生み出す水への感謝、畏敬の思いが感じ取られる。
 日本の水路橋としては国重要文化財となっている熊本県の通潤橋が石造りのものとして有名だが、京都府の琵琶湖疎水(煉瓦造り)などとともに、戦前のRC構造物としてこの水路橋も近代化遺産に仲間入りできるのは間違いないだろう。
 なお、水路橋に至る途中、巨大な導水管が見られるが、これは第二発電所の下流にある第三発電所へ送水するためのものである。
(取材・構成/藤原優太郎)