会長の言葉

韓国オツトギ祝祭 会 長 菅原 三朗

 全国肢体不自由児者父母の会連合会(全肢連)と韓国脳性マヒ福祉会は、1983年に、民間の障害者団体として先駆けとなる姉妹結縁を締結して以来今年で24年目である。
 両団体はこれまで毎年、障害者及び家族の方々の相互訪問などを通じて、親善交流をはかるとともに障害児者福祉向上のための研鑽の機会として活用され、国際障害者年における「完全参加と平等」を目指した、多くの歴史を共に歩んできた。韓国脳性マヒ福祉会が毎年行っているオツトギ祝祭「オツトギ」とは日本で言う「起き上り小法師」のことで底におもりをつけた達麿の人形で倒してもすぐに起きあがる。これは韓国で重度の障害児の「愛稱」としての呼び名である。今年で第24回目のこの祝祭は重度の障害児者と父母の、リクリエーションを兼ねた全国大会である。このイベントに全肢連からの訪問団として、今年は東北ブロックから20名の親子が参加し私も訪問団の団長として同行した。
 9月23日の「オツトギ祝祭」当日は晴天に恵まれ、ソウル市内漢江市民公園の会場にはバスや自家用車などで全国各地より約2,000名の親子と多数のボランティア福祉関係者などが参加。警察音楽隊の国家演奏にはじまり関係者のあいさつのあと功労者表彰などが行われた。私も全肢連訪問団を代表して祝辞を申し上げた。



 やがて特設の舞台では各地区のグループごとの歌やおどりなどの芸能発表や寸劇などが次々と披露され、障害にもめげず一生懸命に発表する姿には、しばしば涙する場面もあった。やがて我々全肢連訪問団にも指名があり、全員用意の半天姿で秋田の「ドンパン節」をおどった。続いて「星影のワルツ」を歌い拍手喝采をあびた。そのあとはプロの女性歌手の歌などもあった。最後はまた当日の発表に対する審査結果による表彰が行われフィナーレとなった。
 「オツトギ祝祭」は今年で24年も続いているという、時代が変化していくので長く続くことが必ずしも良いかどうかは別として、あの熱気とエネルギーには圧倒される思いであった。日本では障害児者の親子が一緒に参加するこのような大規模な催事はない。
 今、日本では社会の変貌に対応する構造改革が進められ、障害者福祉も多様化するニーズを踏まえながら、障害者の自立と地域生活への移行が推し進められ、今年4月からは「障害者自立支援法」が施行されるなど制度や施策も急激な改革が続いている。しかしこれには生活基盤である所得保証がされないまま応能負担から応益負担が導入され、障害者や家族に大きな負担を強いるものであり自立支援とは逆行するとの批判もある。
 旧態依然のような感じの「オツトギ祝祭」を観て、改めて障害児者福祉の原点とは何かを考えさせられた。