文化遺産
No.49
池田氏庭園
大仙市高梨字大嶋

近代文化遺産

 仙北平野のほぼ中心部、田園地帯にひときわ目立つ大きな屋敷がある。山形県酒田の本間家、宮城県丸森町の齋藤家と並ぶ東北三大地主として知られた池田家である。明治時代中頃から戦前まで当主が高梨村長をはじめ秋田県初の貴族院議員や秋田銀行の頭取などを歴任している家柄で知られる。
 池田家は明治29年(1896)の六郷大地震で家屋が倒壊したのをきっかけに耕地整理事業に合わせて屋敷地を拡張。敷地はおよそ四万二千ヘクタール(約1万3千坪)で、俯瞰する敷地は六角形をなし、池田家の家紋である亀甲桔梗の亀甲になぞらえたといわれる。周囲は石垣を伴う堀や土塁で囲まれている。

池田家の庭園は秋田市の千秋公園なども設計した近代庭園づくりの先駆者長岡安平の協力も得て大正年間に完成している。
 平成18年6月17、18日の両日、一般公開された日に見学する機会を得た。大仙市教育委員会のボランティアガイドの詳しい説明を受けながら約四十分、庭園内を見学した。
 真昼山を正面に望む東側に薬医門の正門があり、エゴノキの花が咲きこぼれる広いアプローチを進むと左手に瀟洒な洋館、右手に米蔵や味噌蔵が立ち並んでいる。中央にある主屋は昭和27年の火災で焼失し新しい家屋となっているが、その前にかつての玄関口の礎石が残されている。
 平成16年、秋田県内で初めて国の庭園名勝に指定された「池田氏庭園」。中でも最大の見所は主屋南西側にある主庭園である。日本最大級という笠の径約四メートルという巨大な雪見燈籠とその向かいに建つ鉄筋コンクリート造りの二階建て洋館が目を引く。洋館は大正11年(1922)に私設の公開図書館として建てられたもので地域の人々に開放されていたという。破損の目立つ洋館は今後、大仙市が管理主体となり池田家と協力しながら保存整備活用の方向であるという。

(取材・構成/藤原優太郎)