文化遺産
No.48
高砂堂店舗
秋田市保戸野通町2-24

近代文化遺産

 貴重な近代化遺産が現代化の波に襲われ、その多くが失われた秋田市。そんな中で大正建築の美を残しているのが通町橋近くの御菓子司高砂堂である。このお菓子屋さんは、明治二十七年(一八九四)一月二十四日に大日本帝国政府から菓子製造営業免許の鑑札を取得し、りんご羊羹を製造したのが始まり。同三十五年六月に店舗を現在地に新築した。
 現在の店舗は大正七年(一九一八)に改築されたもので、平成七年、通町商店街の歩道拡幅の再開発事業で後方に曳き屋、保存改修がなされた。平成十二年に国指定登録有形文化財に指定。木造二階建て、瓦葺きの店舗部分は建築面積が六十四平方m(約二十坪)となっている。

 ちなみに、大正七年といえば、千秋公園の一角に大正天皇即位記念事業としてルネサンス式洋館の秋田県記念館が開館(十月三十一日)。同時に記念図書館(秋田県立図書館の前身・旧東根小屋町)も落成していた。また同年は、明治三十七年建築の県有公会堂(現県民会館があるところ)が火災で焼失した年でもある。時あたかも大正ロマンの全盛期、旭川のほとりに新風ただようハイカラな小店舗はひときわ市民の目を集めたものと想像される。
 商店街の角地に建つ二階建て、寄せ棟造りの店舗は、街路側二面に庇を設け、白漆喰籠め、瓦葺き和風の外観としたが、内部は先進的な洋風の雰囲気が随所にちりばめられた。一階床面には男鹿産の石材を使用、ショーケース台には大理石や瑪瑙(めのう)が用いられた。さらに壁面の菓子棚も一部改良されているものの大正当時のままである。建築の設計・施工にあたったのは地元の宮大工であった藤本東三郎。当時の施主の趣味が偲ばれる貴重な近代化遺産である。

(取材・構成/藤原優太郎)